これを使わない手はない!小規模宅地等の特例

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国税庁が発表した平成25年分財産の金額の構成比によると、土地が全体の41.5%を占めています。相続財産のうち土地建物など不動産が占める割合は年々減少傾向にありますが、「相続財産の大部分が不動産である」という人も少なくありません。

そこで活用したいのが「小規模宅地等の特例」です。

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1.小規模宅地等の特例とは?
2.宅地等の種類と限度面積・減額割合
3-1.宅地等の適用要件【特定居住用宅地等】
3-2.宅地等の適用要件【特定事業用宅地等】
3-3.宅地等の適用要件【特定同族会社事業用宅地等】
4.貸付事業用宅地等
5.こんなケースはどうなる?

1.小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例とは、被相続人等の自宅や事業用の宅地等の評価について、一定の要件のもと高額な減額が認められている制度をいいます。

例えば、相続発生後に次のようなケースが考えられます。

ケース①

夫が亡くなり、居住している不動産と少しの預貯金を相続しました。

基礎控除額も引下げられ、相続税の対象となれば、税金を納めるために居住している不動産の売却をしなければならず、住む家を失ってしまいます…。

小規模宅地 家の売却

ケース②

先代経営者が亡くなり、息子が事業を引き継ぎました。その事業所の敷地にかかる相続税の為に、事業存続が危ぶまれます…。

小規模宅地 事業の存続

上記のようなことが起こると、遺された家族は、住む家を失ったり、事業を継続できなくなってしまいます。それを防ぐために小規模宅地等の特例は設けられました。

ただし、最大80%という高額な減額となるため、要件は厳格に定められています。

宅地等の種類とそれぞれの要件について、見てみましょう。

2.宅地等の種類と限度面積・減額割合

小規模宅地等の特例における宅地等は、次の4つに分類されています。

小規模宅地 宅地等の種類

①と②又は③は併用することができます。

小規模宅地 併用

3-1.宅地等の適用要件【特定居住用宅地等】

被相続人の居住の用に供されていた宅地等

小規模宅地 居住用①

別居親族いわゆる「家なき子」が取得する場合

被相続人である父が居住していた家を、同居していない長男が相続する場合には、母(父の配偶者)がおらず、他に父と同居していた相続人もおらず、相続開始前の3年以内に自分の持家もしくは配偶者の持家に居住したことのない場合には小規模宅地等の特例を受けることができます。

被相続人と生計をーにする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等

小規模宅地 居住用②

生計を一にするとは

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

明らかに互いに独立した生活を営んでいるという状態

「経済的」な意味と「物理的」な意味が含まれていて、下記のような要件を総合的に判断する必要があります。

小規模宅地 生計一関連

例えば、①不動産登記の状況について、区分所有の場合は独立性が高いといえます。また、④家屋の居住状況について、玄関、台所、風呂が共有であったり、自由に往来が可能な構造である等の場合には、独立性が低いといえます。

生計が一か否かの判定

生計が一か否かは、同居の場合、原則として生計を一にするものとして判定します。別居の場合、一般的には生計を別にするものとして判定しますが、別居親族への生計費の送金及び職業の有無や各種状況等を総合勘案します。

平成30年4月1日より「家なき子」 要件変更により一部が適用外に

小規模宅地等の特例を使用した過度な節税を防止するために、次に該当する者は「家なき子」から除外されることとなりました。

  1. 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別な関係のある法人が有する国内にある家屋に居住したことがある者
  2. 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

3-2.宅地等の適用要件【特定事業用宅地等】

被相続人の事業の用に供されていた宅地等

小規模宅地 事業用①

事業承継要件について

被相続人と同一の事業を引き継がなければなりません。

事業が同一か否かは、「日本標準産業分類」の分類項目等を参考にして総合的に判断することが合理的と考えられます。そのため、被相続人が「内科」医院を営んでいて、相続人が「歯科」であった場合、日本標準産業分類では、「一般診療所」と「歯科診療所」は小分類番号を異とし、かつ、医師免許についても、別個の免許制度となっていることから、両者の事業は別個のものであると考えることになります。したがって、診療科目を「内科」から「歯科」へ変更した場合には、被相続人の事業の全部を転業したこととなり、特定事業用宅地等に該当しないこととなるため、小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。

被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等

小規模宅地 事業用②

2019年度税制改正 「特定事業用宅地等」の範囲に新たな制限

「特定事業用宅地等」の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以下である場合を除く)を除外することになりました。
なお、この改正は2019年4月1日以後の相続等に適用されますが、同日前から事業の用に供されている宅地等には適用しないこととされています。

3-3.宅地等の適用要件【特定同族会社事業用宅地等】

小規模宅地 特定同族会社

①の出資要件における「親族等」の「等」の範囲は相当広い!?

『親族』とは、6親等内の血族及び3親等内の姻族と定義されていますが、そこに『等』が付くとどのように範囲が広がるのかを確認しておきます。
①「特定同族会社事業用宅地等」の定義は、租税特別措置法の69条の4にあります。(69条の4第3項第3号)。
②69条の4では、「相続開始の直前に被相続人及び当該被相続人の親族その他当該被相続人と政令で定める特別の関係がある者が有する株式」が50パーセントを超える会社を「特定同族会社」としています。
【租税特別措置法の69条の4第3項第3号】
特定同族会社事業用宅地等 相続開始の直前に被相続人及び当該被相続人の親族その他当該被相続人と政令で定める特別の関係がある者が有する株式の総数又は出資の総額が当該株式又は出資に係る法人の発行済株式の総数又は出資の総額の十分の五を超える法人の事業の用に供されていた宅地等で、当該宅地等を相続又は遺贈により取得した当該被相続人の親族(財務省令で定める者に限る。)が相続開始時から申告期限まで引き続き有し、かつ、申告期限まで引き続き当該法人の事業の用に供されているもの(政令で定める部分に限る。)をいう。
※ この「政令で定める特別の関係がある者」をさして、「等」としている。
③ そして、この「政令で定める特別の関係がある者」は、租税特別措置法施行令の40条の2に規定されています(40条の2第12項)。
④ 40条の2では、「特別の関係がある者」を以下のように規定しています。
【租税特別措置法施行令の40条の2】
12  法第六十九条の四第三項第三号 に規定する政令で定める特別の関係がある者は、次に掲げる者とする。
一  被相続人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
二  被相続人の使用人
三  被相続人の親族及び前二号に掲げる者以外の者で被相続人から受けた金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
四  前三号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
五  次に掲げる法人
イ 被相続人(当該被相続人の親族及び当該被相続人に係る前各号に掲げる者を含む。以下この号において同じ。)が法人の発行済株式又は出資(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額(以下この号において「発行済株式総数等」という。)の十分の五を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該法人
ロ 被相続人及びこれとイの関係がある法人が他の法人の発行済株式総数等の十分の五を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該他の法人
ハ 被相続人及びこれとイ又はロの関係がある法人が他の法人の発行済株式総数等の十分の五を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該他の法人

「事業用」でなければならない

《事業とは》

自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務をいいます。

では、次のような宅地等は事業用となるのでしょうか?

①特定同族会社に継続的に貸し付けられていた宅地等

この場合、被相続人から特定同族会社に対する宅地等の貸付は、それが被相続人の事業に該当する場合に限られますので、無償や相当の対価に相当しない程度の対価による貸付は、事業に該当しません。

②被相続人が所有し、特定同族会社の事業の用に供されていた建物等の敷地の用に供されていた宅地等

この場合、被相続人から特定同族会社に対する『建物等の貸付』は、それが被相続人の事業に該当する場合に限られますので、無償や相当の対価に相当しない程度の対価による貸付けは、事業に該当しません。

③被相続人と生計を一にしていた親族が所有し、特定同族会社の事業の用に供されていた建物等の敷地の用に供されていた被相続人の有する宅地等

この場合、生計を一にしていた親族から特定同族会社に対する『建物等の貸付』は、その者の事業に該当する場合に限られますので、無償や相当の対価に相当しない程度の対価による貸付は、事業に該当しません。被相続人から生計を一にしていた親族に対する建物等の敷地としての宅地等の貸付は、無償や相当の対価に至らない程度の対価による貸付けに限られます。

4.貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地等は、平成22年4月1日以後に開始した相続から適用されています。

相続開始の直前において、被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、一定の要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した部分は、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の対象となり、その減額割合は50%です。ここでいう貸付事業とは[不動産貸付業]、「駐車場業」、「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます。

被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等

小規模宅地 貸付事業用①

被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等

小規模宅地 貸付事業用②

「貸付事業用宅地等」と「特定事業用宅地等」、「特定同族会社事業用宅地等」、「特定居住用宅地等」のいずれか2以上についてこの特例の適用を受けようとする場合

次の算式を満たす面積がそれぞれの宅地等の限度面積となります。
(A×200平米÷400平米)+(B×200平米÷330平米)+C≦200平米
A:「特定事業用宅地等」、「特定同族会社事業用宅地等」の面積の合計
B:「特定居住用宅地等」の面積の合計
C:「貸付事業用宅地等」の面積の合計

平成30年4月1日より貸付事業用宅地等の範囲の見直し

平成30年4月より、相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、対象から除外される(事業的規模で貸付けを行っている場合は除く)こととなりました。

【事業的規模で貸付けを行っている場合とは?】

事業的規模で貸付けを行っているかは、所得税の不動産所得における「5棟10室基準」等で判定します。
所得税の不動産所得における「5棟10室基準」とは、以下のとおり、その不動産所得に係る建物の貸付けが事業的規模であるか否かを判定する形式的な基準をいいます。

●所得税の不動産所得における「5棟10室基準」(所基通26-9)
次に掲げる事実のいずれかに該当する場合、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。

小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等について、原則相続開始前3年以内に貸し付けを始めたものはその対象から除外されることとなりますが、上記の基準を満たす場合を「特定貸付事業」として、その3年以内に貸し付けたものも対象となる例外措置が設けられています。

5.こんなケースはどうなる?

(1)二世帯住宅に居住していた場合

被相続人と親族が居住するいわゆる二世帯住宅の敷地の用に供されている宅地等について、二世帯住宅が構造上区分された住居であっても、区分所有建物登記がされている建物を除き、一定の要件を満たすものである場合には、その敷地全体について特例の適用ができるようになりました。

(2)老人ホームなどに入居又は入所していた場合

次のような理由により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等について、一定の要件を満たす場合には、特例の適用ができるようになりました。ただし、被相続人の居住の用に供さなくなった後に事業の用又は被相続人等以外の者の居住の用とした場合を除きます。

小規模宅地 老人ホーム等

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まとめ

居住用の土地や事業用の土地は、取得した人にとって、取得後も「住む場所」、「仕事」などとして生活基盤となることが多いでしょう。この生活基盤となる土地を維持できるように、創設された制度が、小規模宅地等の特例です。
小規模宅地等の特例は、平成26年には、二世帯住宅に居住していた場合、老人ホームに入居していた場合の適用要件の緩和等が行われ、平成27年には、限度面積の拡大等が行われました。

平成27年に相続税の基礎控除額が減額されたこともあり、小規模宅地等の特例は、今後さらなる制度の活用が見込まれます。

宅地等の種類や限度面積など、ポイントを押さえておきたい制度の一つです。

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